プロビジョニング(Provisioning)とは、英語の「provision(供給、準備)」を語源とし、必要に応じてリソースを提供できるよう準備しておくことを意味します。
ITの分野では、サーバーやネットワーク、ソフトウェア、アカウントといったITリソースを、ユーザーやシステムの要求に応じて割り当て、設定し、利用可能な状態にするまでの一連のプロセスを指します。
例えば、新入社員が入社した際に、業務に必要なPCを準備し、業務用システムのログインアカウントを発行する作業は、プロビジョニングの代表的な例と言えるでしょう。
プロビジョニングを理解する上で、対義語である「デプロビジョニング(Deprovisioning)」も知っておくことが重要です。
デプロビジョニングとは、プロビジョニングによって割り当てられたリソースを回収・削除し、割り当て前の状態に戻すことを指します。具体的には、退職者のアカウントを削除したり、不要になったサーバーを停止・削除したりする作業がこれに当たります。
両者の違いをまとめると、以下のようになります。
項目 | プロビジョニング | デプロビジョニング |
|---|---|---|
意味 | リソースの供給・準備 | リソースの解放・削除 |
目的 | ユーザーがITリソースを利用できる状態にする | 不要なリソースを整理し、コストやセキュリティリスクを低減する |
具体例 | ・新入社員へのPC割り当て | ・退職者のアカウント削除 |
このように、プロビジョニングとデプロビジョニングは、ITリソースのライフサイクル管理において表裏一体の関係にあり、どちらも情報システム部門にとって欠かせない重要な業務です。
プロビジョニングは、対象となるリソースによっていくつかの種類に分けられます。ここでは、情報システム担当者がとくに知っておきたい代表的な3つの種類について解説します。
サーバープロビジョニングとは、サーバーを構築し、OSやアプリケーションをインストールして、利用可能な状態に準備することです。物理的なサーバーだけでなく、クラウド環境における仮想サーバーの構築も含まれます。手動で行うこともありますが、近年では構成管理ツールを用いて自動化するケースが増えています。
サービスプロビジョニングとは、ユーザーが特定のITサービス(SaaS、PaaSなど)を利用できるように設定を行うことです。例えば、社内で新たに導入したSaaSを、従業員がすぐに使えるように初期設定を行ったり、利用権限を付与したりする作業が該当します。
ユーザープロビジョニングとは、ユーザー(従業員など)がシステムやサービスを利用するために必要なアカウントを作成・設定・管理することです。入社時のアカウント発行、異動に伴う権限変更、退職時のアカウント削除(デプロビジョニング)など、従業員のライフサイクルに密接に関わる業務です。
近年のSaaS利用の急増に伴い、このユーザープロビジョニングの効率化と自動化が、多くの企業で重要な課題となっています。
これまで手作業で行われることも多かったユーザープロビジョニングですが、なぜ今、その「自動化」が急務となっているのでしょうか。多くの企業様で、退職者のアカウント削除漏れや、SaaSの棚卸し業務に膨大な時間がかかっているのが実情です。その背景には、企業が抱える3つの大きな課題があります。
働き方の多様化などを背景に、多くの企業でSaaSの導入が急速に進んでいます。ある調査では、日本企業の平均SaaS導入数は8.7個にものぼると言われています。
しかし、部門ごとに最適なツールが個別に導入される「サイロ化」が進んだ結果、情報システム部門が「社内で誰が・どのSaaSを・どのように使っているか」を正確に把握できない状況が生まれています。SaaSの数が増えるほど、管理すべきアカウントは雪だるま式に増え、手作業での管理は限界に達しているのです。
スプレッドシートなどを用いた手作業でのアカウント管理は、どうしてもヒューマンエラーを誘発しがちです。
アカウント発行時の設定ミス
権限変更の対応漏れ
退職者のアカウント削除漏れ
とくに、退職者のアカウントが削除されずに放置されると、元従業員による不正アクセスや情報漏洩につながる重大なセキュリティリスクとなります。
「ほとんど使われていないのに、ライセンス費用だけを払い続けている」といった休眠アカウントの存在も大きな問題です。利用実態が把握できていないために、解約できずにコストが垂れ流しになっているケースは少なくありません。
実際に、株式会社M&Aクラウド様ではSaaS管理ツールを導入し、アカウントの棚卸しを行ったことで年間約160万円ものコスト削減に成功した事例もあります。プロビジョニングの管理体制を見直すことは、コスト最適化に直結するのです。
煩雑化したユーザープロビジョニングを自動化することは、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
これまで手作業で行っていたアカウントの発行・権限変更・削除といった一連の作業を自動化することで、情報システム部門の業務工数を劇的に削減できます。
クラシル株式会社様では、SaaS管理ツールを導入したことで、退職者1名あたり30分かかっていたアカウント削除作業がわずか5分に短縮され、工数を80%も削減できたという事例があります。創出された時間を、より戦略的なIT企画業務などに充てられるようになります。
ユーザープロビジョニングの自動化は、セキュリティ強化にも大きく貢献します。人事システムなどと連携し、退職者の情報が更新されたタイミングで、関連するSaaSアカウントを自動的に削除(デプロビジョニング)する仕組みを構築できます。
これにより、アカウントの削除漏れという人的ミスを根本からなくし、情報漏洩などのセキュリティリスクを未然に防ぐことが可能です。
プロビジョニングを自動化するツールには、SaaSの利用状況を可視化する機能が備わっていることがほとんどです。誰がどのSaaSをどれくらいの頻度で利用しているかを把握し、長期間利用されていない休眠アカウントを特定できます。
このデータに基づいてライセンスプランを見直したり、不要なアカウントを解約したりすることで、無駄なITコストを継続的に削減できます。
ユーザープロビジョニングを効率的に自動化するためには、「SaaS管理ツール」の活用が最も現実的で効果的な方法です。
SaaS管理ツールは、社内で利用されているSaaSを一元的に管理し、アカウントのライフサイクルを自動化するためのさまざまな機能を提供します。
SaaSアカウントの一元管理
社内のSaaS利用状況をダッシュボードで可視化
アカウント発行・削除の自動化
入退社や異動に連動したアカウントのプロビジョニング・デプロビジョニング
利用状況の可視化と棚卸し
ログイン状況などを基に不要アカウントを検知し、棚卸しを自動化
シャドーITの検知
会社が許可していないSaaSの利用を検知し、セキュリティリスクを管理
コスト管理
SaaSごとのコストを可視化し、費用対効果を分析
自社に最適なSaaS管理ツールを選ぶためには、以下の3つのポイントを確認することが重要です。
SaaSのアカウント管理だけでなく、PCやスマートフォン、ソフトウェアライセンスといったIT資産もまとめて管理できるツールを選ぶと、情報システム部門の管理業務をさらに効率化できます。従業員情報に紐づけて、「誰が・どのデバイスを・どのSaaSアカウントで利用しているか」を一元管理できると、管理の精度が格段に向上します。
人事システム(HRMS)やID管理システム(IdP)など、すでに社内で利用しているシステムとスムーズに連携できるかは非常に重要なポイントです。とくにAPI連携の柔軟性が高いツールであれば、データのインプット・アウトプットが容易になり、より高度な自動化を実現できます。
ツールを導入するだけでなく、それを社内に定着させ、継続的に運用していくためのサポート体制も確認しましょう。初期設定の代行や、運用に関する相談、さらには定常業務の一部を代行してくれるBPOサービスなどを提供しているベンダーもあります。「ひとり情シス」などリソースが限られている企業にとっては、とくに心強い味方となるでしょう。
A. はい、むしろクラウド環境においてプロビジョニングはさらに重要になります。クラウドは物理的な制約が少なく、リソースの追加や削除をすばやく行えるのが特徴です。その俊敏性を最大限に活かすためには、要求に応じて迅速にリソースを準備・解放するプロビジョニングおよびデプロビジョニングの仕組みが不可欠です。A. シン・プロビジョニング(Thin Provisioning)とは、主にストレージ(記憶装置)の領域を割り当てる技術の一つです。あらかじめ物理的な容量を確保するのではなく、仮想的に容量を割り当てておき、実際にデータが書き込まれたタイミングで物理的な領域を割り当てる方式です。これにより、ストレージ容量を効率的に利用できるというメリットがあります。A. 費用は、ツールの機能や管理対象のアカウント数、従業員数によって大きく異なります。月額数万円から利用できるツールもあれば、大規模な組織向けの高度な機能を備えたツールまでさまざまです。多くのツールでは無料トライアルやデモを提供しているため、まずは自社の課題に合うか、操作性などを試してみることをおすすめします。この記事では、プロビジョニングの基本的な意味から、その重要性、そして自動化によるメリットまでを解説しました。
とくに、SaaSの利用が当たり前となった現代において、ユーザープロビジョニングの効率化は、コスト削減やセキュリティ強化に直結する重要な経営課題です。
手作業による煩雑なアカウント管理業務をSaaS管理ツールなどで自動化することで、情報システム部門は日々の運用業務から解放されます。そして、そこで生まれた時間やリソースを、DX推進やIT戦略の立案といった、企業の成長に直接貢献する「攻めのIT」業務へとシフトさせることができるのです。
プロビジョニングの自動化は、戦略的な情報システム部門へと変革するための、大きな第一歩と言えるでしょう。
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